「ブラインドタッチ(キーボードを見ないで打つこと)は、できるようにさせたほうがいいですか?」——教室の保護者面談で、よくいただく質問です。

私の答えは、いつも同じです。「必要です。でも、急がなくて大丈夫です」。そしてもう一歩ふみこんで言うと、私はブラインドタッチを「目指すもの」だとは考えていません。ふだんからタイピングをしていれば、いずれできるようになるものだからです。教室でも、子どもたちに「キーボードを見ないで打とう」とは言っていません。

タイピングの解説としては、少し変わった意見かもしれません。そう考えるようになった理由を、私自身の経験からお話しします。

私は「練習」でブラインドタッチを身につけていない

私がタイピングを上達させ、キーボードを見ないで打てるようになったのは、学生時代のことです。きっかけは、タイピング練習ソフトでも、授業でもありません。オンラインゲームにハマったことでした。

ゲームの仲間と、チャットで話したかった。理由はそれだけです。ゲームの中のチャットは、どんどん流れていきます。ゆっくり打っていたら、話に入れません。だから、とにかく打ちました。タイピングを練習しているつもりは、まったくありませんでした。やりたいことをやっていたら、いつのまにか、できるようになっていました。

この経験があるので、私は「見ないで打てること」を練習の目標にすることに、あまり意味を感じていません。大事なのは、打つ理由があること。そして、たくさん打つこと。ブラインドタッチは、その結果としてあとからついてくるものだと考えています。

ブラインドタッチは「目標」ではなく「結果」 打ちたいことがある たくさん打つ 指がキーの場所を覚える いつのまにか手元を見なくなる 手元を見るのは、キーの場所を確かめているだけ。見ながらでいい 先に決めるのは「見ないこと」ではなく、「打つ理由があること」
図:ブラインドタッチが身につくまでの道すじ

教室の子どもたちにも、同じことが起きている

教室で子どもたちを見ていても、同じことを感じます。伸びるのが早い子には、共通点が2つあります。家でもキーボードにさわっていること。そして、「打ちたいもの」があることです。

いちばんよく見るきっかけは、ゲームの「マインクラフト」です。ゲームの中の看板に文字を書きたい。使いたいブロックやアイテムを、名前で検索したい。そのために、だれに言われるでもなく、自分からキーをさがし始めます。私がオンラインゲームのチャットで上達したのと、まったく同じ形です。

練習用の言葉は打ちたがらない子が、自分の看板に書く言葉なら、一生けんめい打ちます。その子にとって、それは「練習」ではなく「やりたいこと」だからです。

「見ないで打つ」を目標にしなくていい理由

キーボードを見ないで打てるのは、指がキーの場所を覚えているからです。そして、指が場所を覚えるかどうかは、どれだけ打ったかで決まります。「見ないようにする」練習をしたから覚えるのではありません。たくさん打ったから、見なくてもよくなるのです。順番が逆なのです。

手元を見るのは、悪いクセではありません。キーの場所を確かめているだけです。見ながら打っているうちに、よく使うキーから場所を覚えていき、見る必要がなくなっていきます。

とくに、ローマ字もキーの場所もまだあやふやな時期は、それだけで精いっぱいです。そこに「見ないで」まで求めると、一度に考えることが多すぎます。

ですから教室では、始めたばかりの子には「見てもいいよ」と伝えています。指づかいも、最初から正しい形を求めません。まず打つことに慣れてもらい、それから少しずつ直していきます。我流の打ち方の子も、同じです。

それでも、1つだけやっておくとよいこと

何もしなくていい、という話ではありません。教室で見ていると、どの指でどのキーを打つか(運指)が身についている子は、あとからスピードがぐんと伸びます

そこで、打つことに慣れてきたら、ホームポジションに指を置く習慣だけはおすすめしています。左手の人さし指を F に、右手の人さし指を J に置く。キーにある小さな出っぱりが目印です。決まった指で打つ感覚に慣れてくると、手元を見る回数は、自然にへっていきます(→ ホームポジションの覚え方)。

見ずに打てるようになるまでの期間は、人によって大きくちがいます。「何か月で」とは言えません。期間を気にするより、打つ機会がたくさんあるかどうかを見てあげてください。

おうちでできるのは、「打ちたい場面」を作ること

保護者の方にできるいちばんの応援は、練習をさせることではなく、お子さんが打ちたくなる場面を作ることです。

家での練習については、私は特に指示を出していません。保護者の方には「気が向いた時でいい。短時間でいい」とお伝えしています。

まとめ

カタカタランドの花火タイピングには、次に打つキーが光るキーボードガイドがあります。手元を見ても、画面を見ても、どちらでもかまいません。まずは1分、楽しく打ってみてください。

この記事を書いた人

伊藤 啓太

「MUTSUMIプログラミング&クリエイティブラボ」講師。ITやAIの専門家として中小企業の伴走支援や研修も行い、地域の商工会議所にIT専門家として登録しています。教室で小中学生にタイピングとプログラミングを教えた経験をもとに、カタカタランドを運営しています。